狂想曲
叫び散らす奏ちゃん。

その体は怒りに震えていた。


だけどキョウは、それさえ滑稽だとでも言いたげな顔をする。



「奏はさぁ、まさか律のこと、聖女のようにでも思ってる?」

「………」

「律は奏が頭の中で作り上げてるような女じゃないよ」

「キョウ!」


今度それを制したのは私だった。

キョウは私を一瞥するが、だからって言葉を止めない。



「律はオッサンとセックスして金稼いでんだよ」

「……そんな、馬鹿な……」


絶句する奏ちゃんを笑いながらキョウは、



「お前が律をそうさせたんだ。奏が、金と律に執着しすぎて苦しめるから」

「………」

「すべては奏がひとりよがりに自分を守ろうとだけしてるから、周りが――律が、どんな想いでいたかも気付かなかったんじゃん」

「………」

「人を呪わば穴ふたつって言うけどさ、見事に自分に跳ね返ってきたね、奏。哀れだな。同情するよ」


心にもない言い方でキョウは言う。

私は奏ちゃんを見ることができなかった。


キョウは、眉間にしわを寄せた。



「律は奏の所有物じゃない。本物の“お兄ちゃん”でもないんだから、もう律のこと解放してやってくんない?」

「それがキョウの狙いか?」

「あ?」

「そうやって、俺に隠れて律に近付いて、手なずけて。俺から律を引き離すことができれば晴れて作戦成功ってわけだ? 俺を陥れることができればキョウは満足だもんなぁ?」

「おいおい、また被害妄想かよ」

「キョウはただ俺のものが欲しかっただけだろ? 羨ましかったから奪ってやろうって思っただけで、お前みたいなクズが、まさか、人を――律を、本気で愛してるとでも言うつもり?」
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