狂想曲
私はへなへなと膝から崩れた。

駆け寄ってきたのは奏ちゃんだった。



「律!」


でももう、その手を振り払うほどの気力はなかった。

奏ちゃんは泣きそうな顔で私の前にしゃがみ込む。


向こうにぽつんと取り残されたようなキョウは、ひとり煙草を咥え、



「だから嫌だったのに」


かすれた声で自嘲気味にそう呟いた。


私はキョウを見た。

でもキョウは私を見ようとはしない。



「あーあ、失敗したな。やっぱり律が言った通り、早く家出てればよかった」


キョウは花火の音のする彼方へと向けていた目を伏せ、吐き捨てる。



「まぁ、律も混乱してるだろうし、奏と話せばいいよ。そんで、今までのことに対する言い訳と俺への恨みでも聞いてやれば?」


瞬間、奏ちゃんはキッとキョウを睨み付ける。

そして私の腕を掴んだ。



「余裕ぶった顔しやがって。キョウのくせに、ムカつくんだよ」


奏ちゃんはそのまま、私の掴んでいる腕を強引に引いた。

私は痛みに顔を歪ませるが、それでも奏ちゃんは私を捕えたまま。


抗えるわけもなく、キョウとの距離が広がっていく。



振り返り、一瞬だけ見たキョウは、何か言いたげな唇を噛み締めていた。

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