狂想曲
「キョウくんを許してあげてほしいの。私なんかが言えることじゃないけど、あの子もあの子なりに苦しんできたの」
「………」
「キョウくんは、あの頃から、ずっとあなただけを見てきたのよ」
「え?」
るりさんの言葉の意味を、私はすぐには理解できなかった。
何を言われているのかわからなかった。
「どういうことですか?」
「私はキョウくんじゃないから。だからそれは、キョウくん本人に聞くといいわ」
私はずっと、キョウはるりさんのことを想っているんだと思ってた。
けど、違うの?
はっとした瞬間、私は席を立っていた。
「すいません。私、行きます」
言うが先か、店を飛び出した。
足をもつれさせながらも走り、大通りに出て、拾ったタクシーに飛び乗って。
どうして今まで気付かなかったのだろう。
『ずっと見てるだけの人』
『何年も何年も前から、俺が一方的に想ってるだけ』
『俺じゃないやつのことしか頭にない人』
キョウはいつも私に優しかった。
そしていつも私に好きだと言ってくれていた。
それは何か企んでいるわけでも、ましてや私を騙すつもりでもなく、
『本当のこと言って傷つけたくないから。そうなるくらいなら今のままでいいやって』
私は本当に最低だ。
今更ひどい後悔に襲われる。
『俺の夢はもう全部叶ったから、だから目の前にあるものが壊れて絶望する前の、いい時のまま死にたいじゃん』
『今手の中にあるものを失うのって嫌なんだよね。いつか、真実が明るみになった時、多分俺の言葉は誰にも信じてもらえないから』
私は運転手に「急いでください」と言った。
キョウが、死ぬんじゃないかと思ったから。
「………」
「キョウくんは、あの頃から、ずっとあなただけを見てきたのよ」
「え?」
るりさんの言葉の意味を、私はすぐには理解できなかった。
何を言われているのかわからなかった。
「どういうことですか?」
「私はキョウくんじゃないから。だからそれは、キョウくん本人に聞くといいわ」
私はずっと、キョウはるりさんのことを想っているんだと思ってた。
けど、違うの?
はっとした瞬間、私は席を立っていた。
「すいません。私、行きます」
言うが先か、店を飛び出した。
足をもつれさせながらも走り、大通りに出て、拾ったタクシーに飛び乗って。
どうして今まで気付かなかったのだろう。
『ずっと見てるだけの人』
『何年も何年も前から、俺が一方的に想ってるだけ』
『俺じゃないやつのことしか頭にない人』
キョウはいつも私に優しかった。
そしていつも私に好きだと言ってくれていた。
それは何か企んでいるわけでも、ましてや私を騙すつもりでもなく、
『本当のこと言って傷つけたくないから。そうなるくらいなら今のままでいいやって』
私は本当に最低だ。
今更ひどい後悔に襲われる。
『俺の夢はもう全部叶ったから、だから目の前にあるものが壊れて絶望する前の、いい時のまま死にたいじゃん』
『今手の中にあるものを失うのって嫌なんだよね。いつか、真実が明るみになった時、多分俺の言葉は誰にも信じてもらえないから』
私は運転手に「急いでください」と言った。
キョウが、死ぬんじゃないかと思ったから。