狂想曲
懐古
考えるより先に足が向いたのは、百花の家だった。
チャイムを押す。
すると少しして顔を覗かせたのは、
「律さん?!」
なぜかレオだった。
「えっ、律?!」
続いて奥から百花も顔を覗かせた。
私はとんだところに来てしまったなと思った。
「ごめん、私、邪魔みたいだね」
「違うの! これは、そういうことじゃなくて!」
しどろもどろに、焦ったように言う百花。
対照的に、落ち着き払っているレオは、「とにかく上がりなよ」と私に、自分の家でもないのに促す。
居心地が悪いなとは思ったものの、行く場所のない私は、それに従った。
決して広くはないワンルームに、3人の何とも言えない空気が重い。
「あ、えっと、あたし飲み物買ってくるね!」
それに先に耐えられなくなったのは百花だった。
私とレオが何か言うより先に、百花は財布片手に飛び出した。
百花の家なのに、取り残された私とレオ。
「ぼく、何か言い訳した方がいい?」
レオは肩をすくめ、開き直ったようなことを言う。
でも私は、今は他人の色恋事を聞いていられるほどの余裕はないから、首を横に降った。
「じゃあ、どうして律さんが泣いてるか聞いた方がいい?」
嫌な子だ。
レオはちょっと会っていない間に、すっかり少年から青年の顔になっていた。
この時期の男の子の成長速度は恐ろしいものがあるなと、私は関係ないことを思ってしまう。