狂想曲
「私は今まで、誰の、何も知らずに生きてきたの」

「他人のことなんてわからないのは当たり前だと思うけど」

「そういうことじゃなくてね。私は存在してるだけで人を傷つけてたんだな、って」


少なくとも、私さえいなければ、キョウと奏ちゃんはあそこまでいがみ合うことはなかったかもしれないのだから。



「私が誰も愛せないから悪いんだよ」


原因はわかっていた。



お母さんが男を作って家を出て行った時、私の中の何かが歪んだ。

それまで夫婦の理想像のようだと思っていた両親が、互いをけなし合い、罵倒し合って、最後には他人になった。


私は幼いなりに、この世には永遠も愛もないのだと悟った。


そして自殺してしまったお父さん。

首を吊って死んでいたお父さんを一番最初に見つけたのは私だった。



そのふたつの出来事が、今も私を苦しめる。



「せめて私が、奏ちゃんか、キョウか、どちらかでも愛せてたら、って」


懺悔するように漏らしていた。

レオは何も言わなかった。


何も言わない代わりに立ち上がり、



「ぼく、今日は帰るよ。ちょっと用事思い出したから」


それが嘘か本当かはわからない。

でも、私にとってはどちらでもよかった。


レオは「またね」という言葉を残し、部屋を出た。



私はそこで膝を抱えた。

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