狂想曲
私は当分の間、百花の部屋に泊めてもらうことにした。
百花は私に何も聞かなかった。
レオとの後ろめたい何かでもあるのか、私が聞かないから、百花も聞いてはこない。
私の頭の中では、奏ちゃんとキョウの顔が、交互に浮かんでは消えてを繰り返していた。
考えたからってどうにかなることではないのに。
なのに、いくら考えないようにしようと思っても、そうはできない。
百花の家にひとりでいると、なぜかお腹がしくしくと痛んだ。
だからというのもあるけれど、私は百花の部屋から一歩も出られなかった。
奏ちゃんに、キョウに、もしも会ってしまったら、と、思う度に身がすくんで。
百花はきっと、そんな私をそれなりに心配してくれていたのだとは思うけれど、でも私たちの間に会話らしい会話はなかった。
そして、あれから一週間ほどが経ったある日、百花が仕事でいない間に、レオがひとりでこの部屋に来た。
「律さんさぁ、携帯、充電切れてるよ。もう! 連絡つかなくて困るじゃないか」
レオは怒っていた。
私は、怒ってるレオを見ながら、少し背も伸びたのかな、と、関係ないことを思ってしまう。
レオは私の向かいに腰を下ろした。
「あのね、ぼく、律さんに大事な話があるんだけど」
「………」
「すっごく大事な話だから、ちゃんと聞いてよ?」
念を押すようにレオは言った。
どうだっていいと思いながらも、私はしぶしぶレオに顔を向ける。
レオは真剣な目をして、ひとつ息を吐き、
「単刀直入に言うと、律さんのお母さんが、律さんに会いたがってるんだけど、律さんはどうしたい?」