狂想曲
「……え?」


すぐには意味が理解できなかった。


男を作って家族を捨てた、私のお母さんが?

いや、それよりも、どうしてレオが私のお母さんを知ってるの?



「何、言ってるの?」


声は、かすれていた。

喉が焼け付くようにからからに渇いている。


レオはどう説明しようかというような顔をしながらも、少し考えた後、



「ぼくね、律さんのお母さんの再婚相手の息子なの」

「え?」

「だからぁ、2年くらい前に、ぼくの父が再婚したの。その相手が、律さんのお母さんってことなんだけど」

「ちょ、ちょっと待って」


ひどく混乱した。

私は軽くパニックになって目を泳がせる。


レオはそんな私を真っ直ぐに見た。



「ぼくね、中学生の頃から売り専だったんだけど。内緒にしてたけど、兄貴は薄々それに気付いてたみたいで、仲悪くなって。っていうか、一方的に気持ち悪がられて」

「………」

「で、2年前、父の再婚を機に、ぼくはあの家を出たんだ」

「………」

「元々、家での居心地が悪かったっていうのもあるけど、いきなり知らないおばさんと暮らせないし、その人を“新しいお母さん”だとも思えないから、いいチャンスだと思って」


レオは私から目を逸らさないまま、



「もちろんぼくたちが知り合ったのは偶然だよ。初めはただ単純に、パパ繋がりで、ぼくは律さんと友達になりたいと思っただけなんだから」

「………」

「でも、少し前にぼく、兄貴と喧嘩したって言ったじゃない? あの時にね、電話じゃ埒が明かないからって、ぼく、2年ぶりに実家に戻ったの」

「………」
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