狂想曲
午後2時。
人の少ないカフェテリアで、私はアイスティーを頼んだ。
レオが「そうと決まれば善は急げだ!」と言った所為で、さっきの今で、私はお母さんとの3年ぶりの対面を果たすことになった。
心の準備をする時間すらなかった。
だから、私はもう、なるようになれと開き直っていた。
約束の時間から5分ほど遅れた頃、お母さんはやってきた。
「久しぶり」
言ったのは、私。
たかが3年、されど3年。
お母さんは私の向かいに座るなり、肩を揺らしながら、持っていたハンカチでそっと目元を拭った。
「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
「別に謝ってほしくて来たわけじゃないから」
まるで、もう何十年も前に生き別れた人のよう。
きっと私は、会えば懐かしさで泣いてしまうのかもしれないとすら思っていたのに、実際は、お母さんに対して、そこまでの感慨は生まれなかった。
私は冷たく言ったつもりではなかったけれど、でも顔を上げたお母さんの表情は硬い。
「まさかあなたがレオくんとお友達だったなんて思わなくて」
「うん」
「奏と律のこと、レオくんから聞いて」
「うん」
「奏が本当はあの、川瀬さんの子だってことも、あなたは知ってしまったのね」
「キョウが教えてくれたよ、全部」
私の言葉に、お母さんは目を見開いた。
そしてすぐにそれを伏せ、「そう」とだけ。
「奏も、キョウくんも、どちらが悪いわけでもないのに、今もふたりは苦しみの中で互いを憎み合っているのね」