狂想曲
私は百花の家に帰ってまず、充電が切れたまま放置していた携帯を充電器に差した。
電源を入れてみるが、くだらないメールばかりで嫌になり、私はすぐにそれを放り投げる。
百花が帰ってきたのはそんな頃だった。
「うわっ、律が動いてる!」
今まで床に根を生やしたみたいだった私がそこに立っていただけで、帰宅した百花は目を白黒させながら、開口一番にそう言った。
失礼なやつだと思いながらも、私は肩をすくめて見せるだけ。
「今までごめんね、百花。私、近いうちに住むとこ探して出ていくよ」
「え?」
「だって、いつまでも居候させてもらうわけにはいかないでしょ。レオにも悪いしね」
と、言って、百花へと目線をずらす。
百花は苦笑いを返しながら、
「やっぱりわかってた?」
照れたように舌を出す百花。
「律には言いづらかったんだけど、あたし、少し前からレオと付き合ってんの」
「うん」
「初めはそんなつもり全然なかったんだけど。一緒に飲んでる時に、レオにいきなり告白されて」
「レオから?」
意外だった。
驚いた私に百花は頷いて見せながら、
「レオとあたしは似てんの。似すぎてて怖いくらい。だからきっと上手くいかないって思った。だから断ったんだけど」
「………」
「レオが言うの。『そんなの付き合ってみなきゃわかんないじゃない』って。『想像で可能性を潰すなんてもったいないよ』って」
「………」
「あぁ、そうかもしれないなって思った。だからさ、あたし、レオとの未来に賭けてみることにしたの。それでもダメだったら仕方ないけど、その時間は無駄じゃないじゃん?」