狂想曲
目を覚ました時、私は病院のベッドの上にいた。
点滴に繋がれた左腕と、鉛のように重く気だるい体。
おぼつかない思考のままに、視線を彷徨わせ、状況を確認する。
「律?」
ベッドサイドの丸椅子に腰かけていた百花が、私に気付いて涙声を出した。
「心配したよ、もう! びっくりさせないでよー!」
「……ごめん」
言えたかさえわからないようなかすれた声。
それでも先ほどよりはずっと楽になっていて、腹部の痛みも緩和された。
百花は首を横に振りながら、
「律、虫垂炎だって」
「……何?」
「盲腸だよ。あんた、ずっとお腹痛いって言ってたの、それだったんだよ」
「………」
「とりあえず手術は見送るって、さっき先生が。何か、薬でどうにかなるみたい。それでもダメだったら切るしかないらしいけど」
あぁ、私は盲腸だったのか。
遅れて理解しながら、私は倦怠感から息を吐く。
真っ白い天井を眺める私に、百花は遠慮がちに言った。
「でね、あたしさっき、律が倒れてパニックになってね」
「うん?」
「ごめんね」
言い辛そうに、申し訳なさそうに言って、百花は目線をドアの方へとずらした。
私もそれを辿るように目を動かして、驚いた。
「……何、で……」
何で、キョウが、ここに?