狂想曲
「だって何だか、ももちゃんを見てると自分を見てるみたいで。放っておけないっていうか? 傍にいてあげたいって思ったんだもん」

「………」

「あぁ、これが“好き”っていう感情なのかなぁ、って。ぼくだって人並みに恋をするくらい許されてもいいはずだ、そういう気持ちとちゃんと向き合わなきゃ、ってさ」

「………」

「きっとね、ぼくはももちゃんの真っ直ぐ人を愛するところに惹かれたんだと思う。ぼくもこの人に、こんな風に愛されたいな、って」

「………」

「ぼくはこんな見た目だし、年下だし、何より売り専だけど、男だもん。ぼくを認めてくれる人がいるのに、ぼくがぼくを認めないなんておかしいでしょ?」

「………」

「で、認めて、受け入れちゃえば、すごく楽になった。っていうか、クリアになった。ももちゃんに対する気持ちとか、そういうの色々と」


レオの言葉に迷いなんてなかった。

だから私はただ単純にそれをすごいことだと思った。



「売り専、辞めるの?」

「パパ、今、中国にいるんだって。何かを輸入販売するためにどうとか言ってたけど、聞いてない?」

「さぁ?」

「だからまぁ、そういうことだし、当分帰ってこないらしいから、それはパパが帰って来てからの話になるかな」

「ふうん」


つまり、自らの意思だけでは決められない、と言いたいのか。



「っていうか、律さんはどうなの?」


急に、逸らしたはずの話題が戻ってきた。

私は思わず飲んでいたコーヒーの所為でむせてしまう。


笑うレオをひと睨みし、私は呼吸を整え直す。



「パパのこと?」

「それもだけど、キョウさんのこととか、奏さんのこととかだよ」


私たちの輪に爪先ほど浸かっているレオは、なのにずぶずぶと入ってくる。

関わりたがりなのかもしれないと思った。
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