狂想曲
「奏ちゃんとはまだ連絡取ってないけど、キョウとはまた一緒に暮らすようになった。っていうか、一昨日くらいまでずっと看病してもらってたし」

「………」

「けど、やっと体も楽になったしさ、そろそろこれからのこともきちんと考えなきゃ、って」

「へぇ」

「何よ?」

「別に。ただ、本当におもしろいなと思ってさ」


含みを持った笑い。

青年の色を濃くしたレオの瞳は、弧を描く。



「自分を責め続けるキョウさんと、対照的に、人を恨むことでのみ自分を御してきた奏さんとの間で、自分を守ることで精一杯だった律さんがどんな道を選ぶのかな、って」


お得意の考察と分析。

肩をすくめる私にレオは、



「前には進めたの?」

「わからない。でも、今は後ろを向いてないことだけはわかるから」

「そう。それはよかった」

「だから一応、レオにもお礼言わなきゃと思って」

「いいよ、そんなの。ぼくそういうこと言われるキャラじゃないし」


レオは、そしておもむろに席を立った。



「でもまぁ、とりあえずは安心したよ」


テーブルの上にあった伝票は、ひょいと奪われた。

奢ってもらうつもりはなかったのにと、思った私にレオは笑い掛け、「快気祝いだよ」と言った。



「だったらお酒でも頼めばよかった」

「何言ってんだか。虫垂炎って繰り返す人も多いらしいから、くれぐれもお大事にね」


そう言い残し、いつものスキップをしてるみたいな歩調で立ち去った。


何だかなぁ、と、私はいつも思ってしまう。

光の射す明るいカフェテリアで、私は背もたれにもたれかかりながら、重苦しい息を吐いた。

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