狂想曲
久しぶりのまともな食事だからと、少し豪勢なものを作ったのだけれど、私は、あまりそれらに口をつけることができなかった。
寝込んでいる間に胃が小さくなったのか、あまり食欲が湧かなかったから。
キョウも私に「無理して食べなくてもいいから」と言ってくれた。
なのに、吐いたのはその夜のことだった。
キョウは「やっぱり寝てなかったのが悪かったな」と言いながらも、私をベッドまで運んでくれた。
目に見えて何かがおかしくなり始めたのは、その日からだったのかもしれない。
私はそれから、夜になると嘔吐するようになった。
体調はよくなり、お腹が空いてご飯を食べるのに、なのに体が食べ物を受け付けなくなっていた。
受け付けないというよりは、食べた後、胃に何かあると気持ちが悪くなる。
3日が過ぎる頃には、食後に吐けば楽になれると知った。
だから食事の度にトイレにこもることを繰り返していた。
さすがに見兼ねたらしいキョウは私に「病院に行こう」と言ったが、別に調子はいいのだから大袈裟だと断った。
昼間は、いくつかバイトの面接にも行った。
だけど、「茶髪はダメだ」と言われて履歴書さえ見てもらえなかった時にはさすがにへこんだ。
そういう時、吐くと妙に気持ちが落ち着いた。
私は、とにかくまともな仕事くらい始めなきゃと、焦っていたのかもしれない。
けれど、焦ったところでバイトが決まるという話ではない。
次第に自分の中に芽生え始めたキョウへの依存心も怖かった。
甘えたことをするべきではないと思っていた。
だけど、そう思うことがまた焦りに繋がり、私はそのストレスを吐くことでのみ解消させるようになった。