狂想曲
スタバで昼を過ごすことが増えたのも、この頃だった。

コーヒーを飲みながら求人情報誌を眺め、目ぼしい会社に電話をかけてみたりする。


だけど、上手くいかない時は、どうしてそれが連鎖してしまうのか。


「もう採用してしまったので」、「その時間帯はちょっと」、「うちは短大卒以上が基本なので」。

断られる度に、自分がひどく情けない人間に思えてきて、悲しくなった。



「はぁ……」


吐き出したため息は日が経つごとに重くなる。



一度だけ、宮内店長から「人が足りないから来てほしい」と連絡をもらったことがあった。

けれど、また風俗店で働くようなことだけはしないようにしようと思い、断った。


それが自分のためでもあると言い聞かせ続けた。


でも実際、仕事は決まらない。

寄り好みしなければいくらでもあるのに、なのに“ちゃんとした仕事”ばかり選ぼうとするのが悪いのかもしれない。



そして消沈しながら携帯をいじる度、電話帳の0番に登録してある奏ちゃんの名前のところで指が止まる。



このまま二度と会わないというつもりはないのだから、いつかは電話しようとは思う。

でも、今も通話ボタンを軽く押すだけの勇気すら、私にはなかった。


奏ちゃんと会わなければと思う一方で、あの日の恐怖心を思い出してしまう。




決まらない仕事。

キョウとの関係。

奏ちゃんとのこと。




ぐるぐるぐるぐる、考えれば考えるほど、胃が痛くなる。

だけど、何も食べずに吐くと胃酸で喉までやられると身をもって知った私は、無理やりにでも食事をとり、そして救いを求めるように嘔吐した。


気だけは急ぐのに、結局私は、あれから何かを一歩でも進めることすらできていないのだから。

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