狂想曲
このところの私は、あまり眠れなくなっていた。
その所為なのか、ひどく感情の起伏が激しくて、自分自身でそれに疲れを感じることも多い。
だから、ひとりになるとぼうっとすることも増えた。
「律。りーつ。りっちゃーん。……律!」
「え?」
呼ばれて振り向くと、キョウは呆れた様子で、
「何回呼ばせんの」
「あ、ごめん。そんなに呼んだ? 全然気付かなかった」
言う私に、キョウは肩をすくめて見せる。
気付けば夕方になっていた。
観ていたはずのドラマはいつの間にか終わっていて、すっかりニュース番組になってしまっていた。
キョウが帰ってきたことにすら気付かなかっただなんて。
「おいおい、大丈夫かよ」
「あぁ、うん。さっきまで寝てたから、ぼうっとしてて。大丈夫、大丈夫」
私は誤魔化すように笑ったのに、
「まだ腹痛いか?」
「だからぁ、ほんと大丈夫だってば」
「律の『大丈夫』ほどアテにならねぇもんはねぇよ」
「失礼な」
「いや、マジで。ほんと辛くなったらすぐ言えよ?」
心配させていることはわかっているし、それに対して、申し訳ないとも思ってしまう。
だからこそ、私はキョウの前で空元気を演じてしまう。
私は曖昧に「うん」と返事することしかできない。