狂想曲


このところの私は、あまり眠れなくなっていた。

その所為なのか、ひどく感情の起伏が激しくて、自分自身でそれに疲れを感じることも多い。


だから、ひとりになるとぼうっとすることも増えた。



「律。りーつ。りっちゃーん。……律!」

「え?」


呼ばれて振り向くと、キョウは呆れた様子で、



「何回呼ばせんの」

「あ、ごめん。そんなに呼んだ? 全然気付かなかった」


言う私に、キョウは肩をすくめて見せる。



気付けば夕方になっていた。

観ていたはずのドラマはいつの間にか終わっていて、すっかりニュース番組になってしまっていた。


キョウが帰ってきたことにすら気付かなかっただなんて。



「おいおい、大丈夫かよ」

「あぁ、うん。さっきまで寝てたから、ぼうっとしてて。大丈夫、大丈夫」


私は誤魔化すように笑ったのに、



「まだ腹痛いか?」

「だからぁ、ほんと大丈夫だってば」

「律の『大丈夫』ほどアテにならねぇもんはねぇよ」

「失礼な」

「いや、マジで。ほんと辛くなったらすぐ言えよ?」


心配させていることはわかっているし、それに対して、申し訳ないとも思ってしまう。

だからこそ、私はキョウの前で空元気を演じてしまう。


私は曖昧に「うん」と返事することしかできない。
< 192 / 270 >

この作品をシェア

pagetop