狂想曲


ついには私は、吐くだけでは飽き足りなくなった。


お腹が空くから一時的に食事をしても、とにかく体の中に異物があることに気持ちが悪くなり、市販の下剤を使うようになった。

トイレにこもっている時だけが唯一落ち着ける時間になっていた。



でも、もちろん吐くことだって止めてはいないから、吐き過ぎて喉が痛くなり、その痛みはアルコールによって誤魔化す。



キョウに知られたらまた心配されるからと、キョウがいない時に、トイレで酒を飲むことも増えた。

立ち上がることすら面倒で、というのもあるけれど。


酒に飲まれてしまえば何も考えずに眠ることができるから。




キョウはまた私に「痩せたんじゃね?」と聞いてきた。




でも、私の手足はむくんでパンパンになっていて、どう見たって太ったと思う。

だからキョウはおかしなこと言っているなと、私は聞き流して無視をした。


それよりも、隠れて吐いていることなどを知られていないならそれでよかった。


私は以前と何も変わってなんていない。

ただ少し、吐いたりするだけで、それはキョウや奏ちゃんが食後に煙草を吸うのと同じようなものだと思う。



吐いたら自然と、頑張らなきゃ、という気持ちが湧いてくる。



きっとそれはデトックスのようなもので、体の中から汚いものが出て、気持ちがすっきりするような。

だから私はまた、職探しに奔走した。


“頑張っている自分”だけが、誇らしく思えたから。
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