狂想曲
キョウの家に帰ってもなお、私の頭の中には百花の言葉がぐるぐるとまわっていた。
そして、だから、ぼうっと考える。
私はどうすればいいのだろうか、と。
胃が、ぎゅうっと握り潰されたように痛む。
私はその痛みに耐えながら、浅く何度も呼吸を繰り返し、唇を噛み締めた。
吐きたいと思ったその時だった。
「ただいま」
キョウが帰ってきた。
私は、はっとして顔を上げる。
「おかえり」
「おー。晩飯は?」
「あ、考えてなかった。どうしよっか」
「どっか食いに行くか?」
「んー。でも今日はちょっと疲れたからあんまり出歩きたい気分でもないし、私何か作るよ」
「そっか。ま、いいや。俺とりあえず先にシャワー浴びてくるわ」
「うん」
風呂場に向かったキョウの背を見送った後、私はミネラルウォーターのペットボトルを手に急いでトイレに入った。
食事の前に一度吐いておきたかったから。
がぶがぶと一気に飲んで、胃から逆流するものを吐き出す。
すっかり吐き癖がついてしまったので、簡単に吐ける。
コツを掴んだというのもおかしな話だが、とにかく私は胃の内容物をすべて吐き出し切り、ぜぇぜぇと肩で息をした。
そしてそれも落ち着いた頃、私はもう一度大きく深呼吸して、少しすっきりした気分で立ち上がった。
「……あ」
振り向いて、驚いた。
背後にキョウが立っていたから。
やばいとは思ったが、私は咄嗟に言い訳を口にする。