狂想曲
「いやぁ、お昼に百花とランチに行った時に食べ過ぎちゃってさ。やっぱ食べ過ぎはいけないねー」

「………」

「でももう全然平気。あ、キョウ、それよりシャワー浴びるんじゃなかったの?」


私は早口に言った。

でもキョウは、私をいぶかしげな目で見ながら、



「なぁ、律」


低い声で呼ばれた名前に私はびくりと肩を上げた。



「いつまでもそれで通じると思ってんの?」

「何が?」

「俺に隠れてそうやって吐いてんの、知らねぇとでも思ってんのかよ! 今までは調子悪いだけかと思ってたけど、今わざと吐いてただろ!」

「ちょっと、何言ってんのよ」


私はそれでもまだ、必死で誤魔化そうと言葉を探すが、



「いい加減にしろ!」


怒鳴られて、私はオロオロとした。

でもキョウは舌打ち混じりにガッと壁を殴りつけ、



「病院行くぞ」

「痛いって、離してよ!」

「うるせぇよ! 自分が病気だっていう自覚もねぇのかよ!」


私はひどく驚いて、「え?」と声が漏れた。



「……病気って、私が?」

「どう見たってそうだろうが! おかしいって自分でわかんだろ!」

「……私がおかしいって?」


キョウの方こそ何を言っているんだと思った。

私は掴まれている腕を振り払う。



「勘弁してよ。どうして私がそんな風に言われなきゃならないのよ」
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