狂想曲
ふらふらと、行くあてもなく街を彷徨い歩く。
財布も携帯も持っていないのだから、何をすることもできない。
身ひとつの私は、あれからどれくらいが経ったのか、今が何時なのかもわからないまま、疲れ果て、辿り着いた公園のベンチに腰を下ろした。
泣き過ぎて瞼が重たかった。
思考する気力すらないまま、私は空を見上げる。
「はぁ……」
自然とため息が漏れた。
吐くことが、そんなにおかしいのだろうか。
どこも悪くないのに、どうして病気だとか言われなくちゃいけないのだろう。
キョウにそんな風に言われたことが悲しくて、私は思い出したように泣きそうになった。
奏ちゃんだったらわかってくれたはずなのに。
と、無意識にも思った自分に、はっとした。
奏ちゃんが嫌になったからキョウに逃げて、今度はまた、キョウが嫌になったから奏ちゃんに、だなんて、つくづく私の考えは身勝手だ。
私は結局、キョウを愛してはいないのか。
「ギャハハハハ!」
刹那、大声が聞こえてきて、顔を向けると、向こうから酔っ払いらしき男女の集団が、騒ぎながら歩いてきた。
そして私に気付いたその中のひとりの男が、集団から外れてふらふらとこちらへ近付いてくる。
嫌な予感がしたその時だった。
「オネーサン、何やってんのー?」
私は答えず小さく舌打ちを吐き捨てる。
酔っ払いに絡まれるなんて堪ったもんじゃない。
無視して立ち上がるが、他の連中も「誰と話してんのー?」と、わらわらと私たちの方に集まってきた。