狂想曲
あれから私は、あっさりキョウに探し出された。
ふらふら歩いているうちに、まわりまわってキョウのマンションの近くの公園に辿り着いていたとも知らずに、そこでボロボロの格好をしてわんわん泣いていた私を見つけたキョウは、
「すげぇビビった。最初、レイプでもされたのかと思った」
らしく、「ごめんな」、「ごめんな」と何度も謝りながら私を抱き締めていた。
それから私を連れ帰って、何もなかったと知ってもなお、キョウは私に謝り続けていた。
何も言わないままの私に、何も悪くないキョウが、「俺が悪かったから」と言う。
「何もしなくていい。ゆっくりでいい。もう頑張る必要はないから」、
「病院にも行かなくていい。俺がずっと傍にいるから」、
「泣くなよ。律に泣かれたらどうすればいいのかわかんないんだ」、
「律は何も悪くない。俺と奏の関係に律を巻き込んだのは俺だ。だから俺を責めればいい」。
キョウは私を抱き締めたまま、そんな感じのことを言っていた気がする。
私はそれを茫然と聞きながら、泣き疲れて、キョウの腕の中で目を瞑った。
冷たくなってしまった体。
たゆたう意識の中、一緒にいることで壊れてしまうのは私じゃなくてキョウなんじゃないかと思った。
私が、キョウを壊してしまう気がした。
私たちは一体どこに向かえばいいのだろう。
「やっぱり私たちは、もう一度、奏ちゃんと会うべきなのかもしれないね」
私が言えたのはただそれだけだった。
キョウがそれを聞いてどんな顔をしていたかはわからない。
どう思ったのかなんてもっとわからないけれど、かすれた声で「うん」とだけ聞こえた気がした。
その会話が夢の中でのことだったのか、それとも現実でのことだったのかは、私には未だに判別がつかないけれど。