狂想曲
起きた時にはお昼だった。
私はベッドにいて、キョウに抱き締められていた。
泣き過ぎて瞼は腫れぼったくなっていて、声も涸れていたけれど、こんなに眠ったのは久しぶりで、何だか憑きものが取れたような気分だった。
それから、私が「お腹が空いた」と言ったら、キョウがうどんを湯がいてくれた。
薬味すらない素うどんだったけど、食べた後、久しぶりに吐き気をもよおすことはなかった。
「なぁ、どっか行くか」
キョウがそう言ったのは突然だった。
「どっかって、どこ?」
「わかんないけど。ほら、俺ら、祭りにも行けなかったし、出歩くって言っても飯食いに行く程度じゃん? だから、たまにはどっか一緒に行くかなぁ、って」
キョウは昨日のことには一言も触れなかった。
奏ちゃんのことすら話題には出さない。
私は少し考え、「そうだね」と返したら、キョウはパソコンで行楽地を検索し始めた。
本気だったのか、と、今更思いながらも、だったら準備くらいしなくちゃと、私は着替えるために寝室に戻った。
着替えながら、鏡の前で改めて自分の姿を見てみると、本当にガリガリで、どうして今まで気付かなかったのかとすら思い、驚いた。
「いいとこ見つけた?」
リビングに戻り、未だパソコンの前で難しい顔したキョウを覗き込む。
「微妙。この時期だと、紅葉がどうとかいうのしかねぇな。もういっそ、泊まりで温泉にでも行くか?」
「んー。ちょっと、私に探させて」
私はキョウの手からマウスを奪った。
キョウは「こら」と制すが、その拍子にブックマークのボタンがクリックされてしまったらしい。
見るともなしにそれを見ると、車関係のサイトや何かに混じって、下の方に見慣れないサイト名が。