狂想曲


私たちは、それからネットで色々と検索して、見つけたコスモス畑に行くことにした。

写真では数十万本のコスモスが咲き乱れていて、それに釘付けになった私が「ここに行きたい!」と言ったからだ。


高速に乗って目的地へと向かう車内、はしゃぐ私にキョウは「落ち着け」とか「あんまり騒いでたらまた吐くぞ」と、口うるさく繰り返していたけれど。


でも、私は無理して笑ってるわけでも何でもなくて、とにかくあの息苦しい街から離れられた解放感があったから。

だから、今は全部忘れてとにかく楽しもうと思った。



コスモス畑に到着したのは午後4時だった。



平日の上に夕方が近い所為か、人はほとんどいなかった。

写真で見るよりそこはずっとすごくて、向こうの方までコスモスが占めているため、彼方が見えなかった。


その風景を見つめていると、自然と心穏やかになり、私は笑みが零れていた。



「ねぇ、キョウ」

「んー?」

「綺麗だね」

「だな」

「来てよかったよね」

「だな」

「ありがとう」

「おー」


聞いているのかいないのか、キョウは間延びした相槌を返してくるだけ。

キョウもずっとコスモス畑を見つめていた。


少し悲しそうな目をしていた。



「なぁ」

「うん?」


キョウも、私も、コスモス畑を見つめたままだった。



「奏に、会うか?」
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