狂想曲
「ねぇ、キョウ」

「んー?」

「ねぇ」


ねぇ、私たちはもうダメなの?

と、聞きたかったけれど、私は涙と一緒にその言葉を飲み込んだ。


聞けば決定的になってしまいそうで、私にはそれが怖かった。


でも、きっとキョウも怖かったのだと思う。

核心に触れることは言わないまま。



「どした?」

「ううん。何でもない」

「そっか」


広大な大地に広がるコスモス畑。

その一角で肩を寄せ合って膝を抱える私たちの存在は、この世の中で、どれほどちっぽけなものなのか。


なのに、出会ってしまった。


奏ちゃんと、キョウと、私は、だけどもきっと出会わなければいけない運命だったんだと思う。

まだ、私たちの果ても、コスモス畑の果ても、見えないままだけど。



「泣くなよ」

「泣いてないよ」

「泣いてんじゃん」

「泣いてないってば」


だから私たちは、笑い合う。

キョウは笑いながら、彼方に向かって指をさした。



「見ろよ。あれ、すごくね?」


西日を浴びてオレンジに染まるコスモス畑。

涙目で見つめると、燃えているような幻想的な世界が広がっていた。


私たちは無言のまま、陽が沈むまで、ずっとそれを見つめ続けた。

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