狂想曲
陽が沈み切ってから、私たちはその地で観光して、誰にあげるわけでもないのに大量にお土産を買って、帰路についた。
マンションに戻ったのは夜も更けた頃だった。
帰る前にご飯を食べに行ったけれど、キョウはすっかり酔っ払ってしまい、キョウのビールをちょっともらっただけの私も、久しぶりの酒と楽しさでテンションが上がっていた。
ふたりでベッドにダイブする。
まるで初めてセックスをしたあの日のようだった。
「ねぇ、キョウ」
「んー?」
「私ね、昨日、公園で女の人と喧嘩したんだよ。掴み合いになっちゃった」
「は?」
「その女の人ね、キョウのこと好きだったんだって。でも、相手にされなかったって泣きわめきながら、私にいっぱい文句言ってた」
思い当たる節でもあったのか、途端にキョウは驚いていた顔を引っ込め、何とも言えないような表情になる。
それがおかしくて私は笑った。
笑ったら、キョウは諦めたように息を吐き、
「誰に何された?」
「相手の名前聞いて、わかるの?」
「わかんなくても名前さえわかればどうにでもなるだろ」
「どうするつもり?」
「殺す」
「じゃあ、言わない」
「言えよ」
「言わないよ。私、そんなことしてほしくて言ったわけじゃないし。それに、別にその女の人のこと恨んでるとかじゃないから」
私はまた笑って見せる。
「それよりキョウってさ、ほんとに私しか見てなかったんだなぁ、って」
「うるさい」
「ねぇ、私なんかのどこがそんなにいいの?」
「それがわかったら苦労しないし。だってしょうがねぇじゃん。何でかわかんないけどさ、俺、律じゃなきゃ無理なんだよ」
「一途だねぇ」
「だからうるさいって」