狂想曲
自嘲気味に言って、左手で私の口を塞いだ。

そして荒々しく私のシャツをたくし上げる。


わざと私をひどく扱うことが、キョウの優しさだということはわかっていた。



「俺に無理やりされたと思えばいい」


最後までキョウは、自分を悪者にしたがる。

思えばキョウは、最初からずっとそうだった。


なのに、どうして私はこうなのだろうかと、思いながら涙が溢れた。



「律」


悲しげに、切なげに、呼ばれた名前。



「好きだよ。すげぇ好きだよ」


うわ言のように繰り返しながら、悪者になりきれないキョウの手は、まるで壊れ物を扱うみたいにそっと私の体に触れた。

骨と皮だけのようになった、私の体に。


私の口を塞ぐキョウの指の隙間から、上擦った吐息が漏れる。



「ごめんな、律」


吐き出すように言って、キョウが私の体内を蝕んでいく。


キョウは私の口元を覆っていた手をどけて、代わりに私にキスをした。

何度も、何度も、角度を変えて、私たちは最後の晩餐みたいに互いの味を脳の裏の裏にまで焼き付けるように、深く、深く、求め合った。



最後は涙の味でしょっぱかった。




「ごめんな」


キョウはまた、繰り返す。

私は一度もそれを言わせてはもらえないまま、果てた後、そのまま意識を手放した。

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