狂想曲
別離
起きた時にはもう、キョウはいなくなっていた。
でも私がキョウに連絡することはなかった。
テーブルの上にはキョウの字でメモ書きがあった。
【出歩かずに寝てろよ】
ただそれだけだけど、逆にキョウらしいなと、私は笑った。
だから私は言いつけ通り、部屋でゆっくり過ごすことにした。
不思議と吐きたいと思うことはなくなっていた。
私はキョウのパソコンで摂食障害に関するページを読み漁り、向き合おうと思った。
まずはドカ食いを止めてコーヒーゼリー入りのドリンクから始めた。
求人情報誌は、捨てた。
頑張ることに意味はないと知ったし、何より、頑張ったところで何にもならなかったから。
力を抜くと、自然と楽になれた気がした。
暇潰しに昔の友達と長電話してみたり、久しぶりに自分でネイルをやってみたり。
そういう、何でもない時間がどれだけ心穏やかになれるのか、私は忘れていたのだと思う。
テレビを観て笑ったのも、一体いつぶりだったのか。
それから3日後、私の携帯に、ずっと音沙汰がなかったキョウからの電話が。
「何やってんの」
いつも通りだから笑ってしまう。
だからきっと私も普通に受け答えができたのだと思う。
「今はねぇ、DVD観てたの」
「何の?」