狂想曲
外は秋晴れの空が広がっていた。
その眩しさに私は目を細めながら、もう久しく空なんて見ていなかったなと、息を吐いた。
「ねぇ、キョウ」
「んー?」
「キョウってほんとに私のこと好きだよね」
「俺に何言わせる気?」
「でも、好きでしょ」
「……だね」
ぼそりとキョウは言う。
私は秋晴れの空を仰ぎながら笑った。
「ねぇ、キョウ」
「だから、何だよ」
「さっき、私を待ってる間、どんなこと考えてた?」
「どんなこと考えてたと思う?」
「私のこと?」
「自意識過剰め」
「じゃあ、何考えてたの?」
「うるさいって。わかってんだろ? 俺は“自意識過剰な女”のことしか考えてないよ。ずっと。あの頃からね」
「やっぱり」
「『やっぱり』って何だよ」
私はまた笑った。
笑いながら、宙を仰いでいなければ、泣いてしまいそうだった。
「ねぇ、キョウ」
「まだ何かあんのかよ」
「……あのね」
言葉が出ない。
ただ一言を告げる勇気がない。
それでも私はちゃんとキョウに言わなければならない。