狂想曲
私たちは本当に奇妙な友情関係だと思う。

レオは背もたれに背を預け、「んー」と伸びをして、



「っていうかさぁ、昨日、パパから電話があったんだ」

「パパ?」


久しく聞いていなかったその名前に、私は思い出したように「あぁ」と付け加えた。



「パパが、何?」

「よくわかんないけど、もうすぐ帰ってくるってさ」

「へぇ」


今はそんなこと、どうだってよかった。

でもレオはそうでもないらしく、急に神妙な顔になり、



「律さん、パパから連絡きたらどうする?」

「さぁ? わかんない。っていうか、私、先のことはまだ何も考えてないから」

「だったらもうパパとは会わない方がいいよ。で、この街を出て、どっか違う場所で暮らしなよ」

「何それ」


怪訝な顔になった私に、レオは取り繕うように言う。



「あのね、変な意味で言ってるわけじゃなくて。ぼくとももちゃんもこの街を出ようと思ってるの。だから律さんもそうしなよって意味で」


私は驚いて、「え?」と声が漏れた。


そういえば、奏ちゃんも言ってたけど。

私にはそんな考えなんて微塵もなかったから、戸惑った。



「パパとの関係も含めてだけど、この街に居続けると、色んな感覚が麻痺して、おかしくなっちゃう。心がすさんでいくっていうのかな」

「………」

「だからね、リセットするって意味でも、ぼくたちはもうこの街を離れるべきなんだよ」

「レオと百花はふたりでどこかに行くの?」


問うた声は困惑に震える。
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