狂想曲
「ももちゃん、地元に帰っておばあちゃんの介護したいって言ってるから、ぼくも着いていくの。別にぼくはどこでだって暮らしていける人間だから」

「………」

「学校も辞める。パパのお金で通ってるし。どのみちサボってばっかで単位も危ないから。やっぱりぼくには勉強なんて向いてなかったってことが、よーくわかった」


レオはあっけらかんとして言った。

いつもこの子には迷いというものがない。


けれど、私は、突然のことに動揺が隠せない。



「あ、ちょっと待って。携帯鳴ってる」


レオは、言って、携帯片手に席を立ち、「電波が悪い」とトイレの方に向かって行った。


取り残された私はひとり、うな垂れる。

耳障りな店内の喧騒がノイズとなり、ろくなことさえ考えられない。



私は、これから、どうするべきなのだろう。



「お待たせ」


少しして戻ってきたレオは、だけども席には着かず、伝票を取った。



「出ようよ、律さん」

「二件目にでも誘ってる?」

「何言ってんだか」


レオは呆れ顔だった。


でも、私は正直、帰りたくなかった。

と、いうよりも、帰る場所なんてもうどこにもないのだから。



それでもレオがさっさと歩き出してしまうから、仕方がないから私も席を立った。



思考は冷静なつもりだったけど、それでも酒は足腰に来た。

ほとんど真っ直ぐ歩けないような状態の私は、「だから言ったのに」と悪態をつくレオに肩を貸してもらった。


そのままふたりでタクシーに乗った。

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