狂想曲
その日はレオが段ボール箱の中から出してくれた毛布にくるまって寝た。
本当に何もない部屋だった。
だけど、レオが言う通り本当に、『屋根と風呂とトイレがあれば、公園よりはマシ』で、住めば都とまでは言わないけれど、でも案外、身ひとつでどこででも暮らしていける気がしてきた。
私は、おかげで、決意新たにできたのだと思う。
私は、慣れ親しんだ、生まれ育った街で、もう一度暮らすことを決めた。
やっぱり私ひとりじゃ知らない街に行く勇気はなくて、何よりお父さんのお墓の近くにいてあげたかったから。
今はそれでいいのだと思った。
翌日からは、地元で新しい部屋探し。
仕事も探さなくちゃいけないしで、わりと忙しかった。
でも、もう、自分の身の丈の分の頑張り以上はしなかった。
夜は街に戻り、レオと百花と3人で集まって、くだらないことを言い合ったり、昔のことを思い出して笑ったりしながら、毎晩のように酒盛りをした。
そして、無事に部屋を借りられたのは、あの日から10日ほどが過ぎてからのことだった。
地元の知り合いや先輩たちが親身になって世話してくれたからであり、私は、人の繋がりをこれほど尊いものだと思ったことはなかった。
レオや百花とはもうあまり会えなくなってしまうけど、でも、だからこそ最後を惜しむように、夜は3人で騒ぎ続けた。
刻一刻と、別れが近付く。
今生の別れというわけでもないはずなのに、きっと私たちは、感傷に溺れていたのだと思う。