狂想曲
「馬鹿じゃないの?」


私は吐き捨てた。


どうすればいいのかなんてわからない。

でも、とにかく少しでも時間を稼ぎたかった。



「こんな事件を起こして、やばいのはパパの方じゃん。こんなことして何になるの?」

「裏切り者には罰を。当然だろう?」

「あんたマジで狂ってんじゃないの?」


だけどもパパは動じない。



「今まで散々、甘い汁を吸わせてやって、いい思いをさせてやったというのに、律はパパにそんな口を効くのかい?」

「………」

「残念だよ。非常に残念だ。何も持たない、猿と同じ、ただの小僧のお前たちが、ちょっと知恵をつけるとすぐにこうなる」

「私もレオも、生きてる、人間だよ」


でも、パパはそれをはっと笑い飛ばし、冷笑した目で宙を仰いだ。

そして蔑んだような言葉を吐く。



「勘違いするな。この世の中は常にふたつに別れているんだ。わかりやすい言葉で言った方がいいか?」

「………」

「金持ちと貧乏人、使う側と使われる側。つまりは持っている人間と持たざる人間だ。お前たちは常に後者でしかない」

「………」

「世界は常に選ばれた1割の人間が動かしているんだ。その他の9割の人間は、選ばれた1割の人間のためにのみ生きるんだよ」

「………」

「わかるか? お前たちがどんなに足掻こうが、我々から見ればそれは、“その他の9割の人間”が裸踊りしているような程度のものなのだからな」

「………」

「ゴミ虫は放っておいても勝手に増殖する。一匹死んだところで何が変わる? お前たちだってそれと同じことなんだよ」

「こんなことしてるあんたの方がよっぽどゴミ虫じゃん」


瞬間、パパの平手に打たれた。

身構えてさえいなかった私は、その力の強さによって、倒れた。
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