狂想曲
顔半分がじんじんした。

目も開けられないほどの痛みだ。


けれど、ここで助けを請えば私たちは負けてしまう。



私が、レオを、救い出してあげなきゃいけない。



「暴力で支配できると思わないで」

「偉そうに」

「大体さぁ、今まで我慢してたけど、あんた臭いのよ。オヤジ臭。マジでキモイ。おまけに自分のこと『パパ』とか言っちゃって、ほんと笑える」


私は、女で、非力で、何もできない人間だ。



怒り任せにパパは拳を振り下ろす。

肩口に、腹部に、パパの“怒り”が打ちつけられる。


それでも、レオを殺すよりはマシだった。



「もう終わり? これだからジジイは」


言い終わるより先に、ガッ、と、また殴られた時、頭部を床に打ち付けた。

私はついには嘔吐した。



「もうやめて」


声を上げ、よろよろと体を起こしたのはレオだった。

レオは倒れ込む私を庇うように前に出て、



「律さんが死んじゃう」

「安っぽいメロドラマだな。それが美しいとでも思っているのか」

「悪いのはぼくだ。ぼくが律さんをそそのかしたんだ。金のために、上手いこと言って律さんを巻き込んで、利用しようと企んだ」

「そうか。ついに白状したなぁ、レオ」


そんなの嘘よ!

と、叫びたかったのに、痛みで声も出やしない。


レオは、私のために、ひとりで罪をかぶる気なのか。
< 249 / 270 >

この作品をシェア

pagetop