狂想曲
セックスをした代償としては高すぎる額の現金を手にホテルを出たのと同じタイミングで、百花からの電話が鳴った。
呼び出された場所はボーイズバー。
百花はカウンターでぐでんぐでんに酔っていた。
「あー、来た来た! この前クラブであたしを置き去りにした律さんじゃないですかぁ!」
「だからそれは謝ったじゃん」
「あんたどうせあの後男と会ってたんでしょー! 奏くんという素敵なお兄様がいるだけじゃ満足できないのかー!」
酒が入った百花は誰かれ構わず絡むからタチが悪い。
カウンター越しにいる男の子たちも苦笑いだ。
「ももちゃん、飲み過ぎだって。今日はりっちゃんと一緒に帰った方がいいよ」
「何よー! 風俗嬢に来られちゃ迷惑だってことー?」
「そういうこと言ってないでしょ」
「うるさいなぁ。だったらおかわり作ってよ! 早く!」
どうやったらここまで酔えるのか。
私は軽い目眩がした。
「ねぇ、何かあった?」
「男に振られましたー。あたしが風俗嬢だって知ったら引かれましたー。それだけでーす」
まぁ、いつものことだ。
それでもいつも百花は、男と別れる度にこんな風になってしまう。
百花の瞼の淵は真っ赤だった。
「とりあえず帰ろうよ、百花。ね? うちに泊まっていいから」
肩に手を置いた瞬間だった。
振り払われて、驚いた。
「律に何がわかるっていうのよ!」
「………」
「あたしにないもの全部持ってるあんたに、何がわかるっていうの?!」