狂想曲
パパは中腰のレオを突き飛ばす。

床に倒れ込む、むくろのような私たち。



「まぁ、いいさ。どうせ初めから、お前たちふたりを生かしておく気はなかったのだから」


私とレオは、朦朧としながら、互いに目を合わせた。



「やんなっちゃうよね、こんな無様な死に方は。ねぇ、“お姉ちゃん”?」


レオはへらへらと笑っていた。


ここに来る時からもう覚悟は決めていた。

答えの代わりに、私もへらへらと笑い返した。



「ゴミ虫めが」


苦虫を噛み潰したように吐き捨てて、パパは近くにあった卓上の電気スタンドを持ち、振りかぶる。


もう抵抗する気力もなかった。

恐怖心はとうの昔になくなっていて、死を受け入れるように目を瞑った、その時。



コンコン、とドアをノックする音が。



「何だ?」


電気スタンドを振り下ろそうとしていたパパの手が止まる。


また、コンコン、と音がした。

パパは少し迷った顔をし、私たちに「変な気を起こすなよ」と釘を刺して、警戒しながらドアの方へと向かって歩く。



私とレオはまた目を合わせた。



ガチャリ、と、ドアを開けた音が聞こえ、「誰だ?」と、パパの声がした瞬間、



「……な、なっ……うっ……」


ガタン、と、大きな物音と共に、それに掻き消されてしまいそうなほど小さなうめき声が。

そしてまた、ガチャリ、とドアの閉まる音。
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