狂想曲
「ちょっ、奏ちゃん!」

「3人で、しかも骨折してる人間を連れてれば、いくらこんな場所だからって、嫌でも目立つ。だからなるべく散り散りに逃げた方がいい」


奏ちゃんは携帯を取り出し、119番をコールした。



「すいません。救急車をお願いします。怪我をしている人がいます。急いでください」


そして一方的に場所だけを告げ、電話を切った。

事態に戸惑う私を気にすることもなく、奏ちゃんはレオに、



「少し待ってろ。これからのことはレオの判断で」

「うん。ありがとう、奏さん」

「俺たちはもう行くぞ。あとはお互い、捕まらないようにだな。まぁ、最悪、捕まったらその時はその時だけど」

「だね」


レオはへらっと笑って見せた。


奏ちゃんは「早く」とまた私の肩を引く。

相変わらず、力の入らない私は、奏ちゃんにされるがまま。



奏ちゃんに引っ張られながら振り返ると、レオは、私たちに向かって手をひらひらとさせていた。



しばらくすると、遠くで救急車のサイレンの音が聞こえていた。

私はレオの無事を祈りながら、見捨ててしまったみたいなことに対する罪悪感を感じていた。


奏ちゃんは街の裏や表を、ただひたすらに歩き回る。




そして、私もいよいよ限界が近付いた頃、奏ちゃんは鉄道のガード下で私を休ませてくれた。




今までは興奮状態でほとんど体に痛みは感じなかったが、ここへきて、少しほっとしたからだろうか、急激な吐き気と鈍痛に襲われた。

その場に座り込んだはいいが、もう、再び立ち上がれる気がしない。


息の荒い私を見た奏ちゃんは、
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