狂想曲
百花の悲鳴にも似た叫びが、店内にこだました。



私は茫然としたまま。


百花まで私を美化しているのか。

そんなことがショックだったからだ。



「こらこら、友達にそんなこと言ったらダメっしょ。八つ当たりしないのー」


さすがに見兼ねたらしい男の子が、割って入ってくれる。



「ももちゃんは可愛いんだから、それだけでも人にはない財産じゃん」

「あたしの二重は所詮はプチ整形の賜物よ」

「でもさ、プチ整形すらするお金ない子だっているわけじゃん?」

「ちょっと、あんたあたしのこと褒めてんの?! けなしてんの?!」

「だからさっきから可愛いって褒めてるっしょ」

「じゃああたしと付き合いなさいよー!」

「ももちゃんが絡み酒やめたらね」


私はそのやりとりを聞きながら、ため息混じりに息を吐き、



「帰るわ」


とだけ言って、背を向けた。

百花はこちらを一瞥するだけで、何も言わなかった。


店を出ると、小雨がぱらついていた。



「最悪」


本当に、何もかもが最悪だった。


どうして呼び出された上に悪態をつかれなければならないのか。

いや、それよりも、親友だと思っていたはずの百花にあんなことを言われるなんて。



私は苦々しい気持ちのまま、家に帰ろうとしていた足を止め、体を反転させて、そのまま目的地もなく彷徨い歩いた。

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