狂想曲
あれからのことは、百花やレオが教えてくれた。
死んだと思っていたパパは、どうやら一命を取り留めていたらしいこと。
そして、未成年である私やレオとの関係のもつれの末に起こった事件のため、被害届は出さなかったらしいこと。
奏ちゃんとキョウは一緒に警察に出頭したけど、だから事情聴取さえされなかったらしいこと。
全部、ふたりから聞いたことだから、どこまでが本当かはわからないけれど。
私はもう、奏ちゃんとも、キョウとも、連絡を取ってはいないから。
奏ちゃんはその場しのぎの嘘でも、またいつか会えるという約束をしてくれた、けれどキョウは、あの時、何も言ってはくれなかった。
それからまた少しして、奏ちゃんも、キョウも、携帯を解約し、あの街から姿を消したのだと、やっぱり百花やレオから教えられた。
私はあの日以来、一度もあの街には行っていない。
でも、それが、私が託された“想い”だから。
『律のことは、俺らが守るから』
『律はこれからの、自分の幸せだけを考えろ』
『そんな運命は、俺と奏が背負えばいい』
『律が逃げることは、俺らのためでもあるんだよ』
『これからは過去を捨てて、自由に、明るく楽しい未来を』
キョウと奏ちゃんは、きっと今もどこかで、ちゃんと生きてると思う。
だから私も、生まれ育った街で、ちゃんと生きると決めた。
いつか、キョウと、奏ちゃんと、また会えることを願いながら。