狂想曲


秋晴れの晴天に恵まれた、午前8時半。

久しぶりにオシャレをして着飾った私は、鮮やかな木製の青いドアを開けた。



【坂本家・大竹家】



横目にそのプレートを見て、私は思わず笑みが零れてしまう。


今日、ここで、レオと百花が結婚式を挙げる。

レストランを借り切って、友人一同を招き、パーティ形式で和気あいあいとやるらしい。



受付時間の、2時間前。



「わー、律だぁ!」


メイクさんに念入りにお化粧を施されながら、鏡越しに百花の笑顔は華やいだ。



「すんごい綺麗じゃん」

「でしょ、でしょ? もっと言ってー」

「っていうか、何で私、こんなに早くから来なきゃダメだったの?」

「えー? だって律は親友なんだから、当たり前じゃん」


相変わらずの、意味不明なことを言う百花。

少し目立ってきたお腹のふくらみは、ドレスの下に隠れている。


隣の部屋からひょこっと顔を出したレオは、タキシードのネクタイを結びながら、



「マジで緊張してきたよ、俺。やばーい。律さん、助けてー」


この3年で、見た目はすっかり大人の男になったレオも、歩き方は変わらない。

私は呆れながら、レオのネクタイを直してやった。



「ちょっと、ほんとに大丈夫なの? 私、昨日から心配でほとんど眠れなくて。親友とかじゃなく、もう、保護者の気分だよ」

「むしろ律は親族席にいても違和感ないよね」

「何それー」

「てか、友人代表のスピーチ、やっぱ律にやってほしかったなぁ」

「だからぁ、私そういうの向いてないんだって。しかも、私と百花の出会いが風俗店だなんてみんなの前で言えるはずないでしょ」

「あぁ、そっか。それもそうだよね。あたしも一応、もうすぐ人の親になるんだし?」
< 265 / 270 >

この作品をシェア

pagetop