狂想曲
百花とレオだって、この3年間、本当に色々あった末に、今日のよき日を迎えたわけで。



泣き濡れた日。

笑い転げた日。


ふたりを見つめながら、私も、私なりのこれまでを思い出す。



「地元に戻ってからは、ほんと大変だったけどさ。でも、百花とレオが、あれからも変わらず友達でいてくれたから、今の私があるんだよ」

「式の前から泣かせるようなこと言わないでよ、律さん」

「けどさ、ほんとのことだもん。ふたりと出会った“過去”を、捨てないでよかった」


やっぱり私は、どんなに頑張ったって、あの頃のことを“なかったこと”にはできなくて。

むしろ、あの頃があるから、今の自分でいられると思ってる。



「じゃあ、律は、あたしとレオに感謝しなくちゃね」

「つまりはぼくとももちゃんは、律さんにとって、恩人ってことだもんねぇ?」


したり顔の百花とレオは顔を見合わせた。

まったく、調子のいいことを。


でも、調子がいいついでに、レオはぺろっと舌を出し、



「ってことで、律さん。『恩人』であるぼくたちのために、ちょっと用事を頼まれてくれない?」

「はぁ?」

「んっとね、下に裏口があるんだけど、そこにもうすぐ大きな荷物がふたつ届くことになってんの」

「何? 荷物? しかも、大きいの?」

「行けばわかるから。で、それ、ぼくたちのところまで運んできてくれない?」

「あのねぇ、私はふたりのパシリをするためにこんな朝早くから来たわけじゃないのよ」

「え? でも、『親友』だし、ぼくらのこと『恩人』だと思って『感謝』してるんじゃないの? だったらいいじゃん、それくらい」


『恩人』だと思わせているのも、『感謝』させているのも、あんたたちでしょうが。

と、文句をぶつけてやりたかったけれど、でも今日の主役はこのふたりだから、私は甘んじてそれを飲み込んだ。


仕方がなく、「はいはい」と肩をすくめ、口を尖らせながら、私はひとり控室を出た。

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