狂想曲
受付時間の、1時間半前。
レオが指定した裏口で待ってみるも、荷物なんて届きもしない。
一体何の嫌がらせをされているのかと、ため息混じりに空を見上げていた、その時。
「……律?」
呼ばれた声に、弾かれたように顔を向ける。
スーツを着た『大きな荷物』がふたつ。
私は目を丸くして、でもやっとレオの言葉の意味がわかり、笑いが込み上げてきた。
「またレオに、してやられたってことね」
キョウと、奏ちゃんが、ふたり揃って現れたから。
「うわっ、すげぇな。レオが言った通り、この時間にここに来たら、とんだサプライズだ」
「ちょっとキョウ、黙ってろよ。お前の所為で全部台無しになるだろ」
「あ? てめぇ、こんな時まで喧嘩売ってんのかよ」
「だからマジでうるさいんだって。そうわめくなよ。こっちは昨日、徹夜で仕事片付けたから、寝てないんだぞ」
「知るかよ。だったらそのまま寝てろっつーの。大体、徹夜明けで朝4時からうちに押し掛けてくんなよな。何回言わせんだよ」
「それ今関係ないだろ。ほんと、これだから馬鹿は」
それぞれに流れた、この3年という時間。
変わったことと、変わらないことの中で、ふたりが一緒に生きてきたのだろうことを想像させてくれる。
私は、未だ言い合うふたりを遮り、
「3年ぶりだね。元気だった?」
キョウと奏ちゃんは互いに顔を見合わせる。
そして昔より柔らかくなった笑みを交わし合い、
「まぁ、そこそこね。俺とキョウは、見ての通り」
「何でだか、今は一緒に家で酒飲む仲だよ」