狂想曲
嬉しかった。

ふたりの今の関係が、そしてあの頃が無駄じゃなかったことが。



「よかったね」


私は想いを込め、短くそれだけ言った。



「律も元気そうでよかった」


髪を黒くして、ホストの頃とは全然違う奏ちゃん。

初めて見る、スーツ姿のキョウ。


ふたりはすっかり似たような顔になっていて、まるで本物の兄弟のよう。



「ってことで、俺、先にレオとももちゃんのところに行くわ」

「え?」

「また後でね、律」


勝手に去っていく奏ちゃん。

その背を、肩をすくめてキョウは見る。



「あいつ、何だかんだで内心は想定外のことに弱いから、一回、落ち着きたいんだろうけど。こんな再会だし? 困った“弟”だよな」


苦笑いを向けられて、3年ぶりに、キョウとふたりで向き合った。

今までの笑いが消える。



「とか言っても、俺も今、どうしたもんかと思ってんだけどさ。やべぇな。久しぶり、くらいしか言えねぇもんな」


キョウは息を吐き、また私に目を上げる。



「俺ら、あれから、それなりに更正したよ。時々は取っ組み合いみたいなことにもなったけど、色んなこと話して。頑張ったんだよ、ふたりで」

「そっか」

「だから俺らはさ、もう大丈夫だから」


キョウの手は、あの頃と同じように私の頭を撫でようとするが、でもすんででそれを止めて引っ込め、代わりに煙草を取り出して、



「奏なんて、今じゃ営業マンだから。しかもカノジョいるし」

「え?」

「すげぇよ。あの天下の奏が根負けするほど、一途な子で。あいつ愛されてんの。奏も、口には出さないけど、大事にしてるっぽいし。だから幸せみたいだよ」
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