狂想曲
奏ちゃんは、今、幸せなのか。
私は噛み締めるように、それを心の中で反すうさせる。
「キョウは?」
「んー?」
「キョウは今、何やってるの?」
「俺はピアノ弾いてるよ」
私は思わず目を丸くしてしまう。
涙が溢れてくる。
「あの街を出た後にさ、何となく、ピアノ買ったんだよね。で、家でうだうだやってたら、近所のガキが集まってきて、『これ弾いてー』とかうるさくて」
「………」
「仕方ねぇから適当に弾いてたら、そのうちガキ共の溜まり場みたくなってさ。したら、そいつらの親とかが『ついでだから格安でうちの子に教えてあげて』とか言い出して」
「………」
「そんなことしてるうちに、その親とかのツテで老人ホームとかに呼ばれるようになって。あと、ジャズバーで頼まれて弾いたり、バンドの手伝いとかも。まぁ、今はわりと楽しくやってるよ」
式の前にお化粧が崩れるだとか、そんなことは気にしてられなかった。
嬉しくて、嬉しくて、私は「よかったね」と繰り返した。
「でも、レオと会ってるなんて知らなかった。あれから、連絡取れなくなったままだと思ってたから」
「あぁ、何か、奏の知り合いの友達の会社の人のナントカがレオと知り合いだった、みたいな? 半年くらい前かな、偶然に」
「そうなんだ」
「よく知らないけど、レオはずっと俺らのこと探してたんだって。でも、ほんと世間は狭いっつーか?」
「すごいね、それ」
「だよな。レオのやつ、『結婚するから来てね』とか言ってたけど、俺もまさか、律がいるとは思わなくて。だってあいつずっと律の話しなかったから、もう連絡取ってないのかと思ってたし」
本当に、あの子は。
私は呆れながらも、感謝せずにはいられない。
「でも、会えてよかった。色々考えてたけど、ほんとは俺もずっと、また会いたいと思ってたから」
「うん」
「あ、そうだ。あいつ、ちゃんとプラネタリウム持ってるよ。いっつも、『また律に会えた時に渡すから』って言って、後生大事にしてるしね」
キョウは煙草の煙を、抜けるような青い空に向かって吐き出しながら、
私は噛み締めるように、それを心の中で反すうさせる。
「キョウは?」
「んー?」
「キョウは今、何やってるの?」
「俺はピアノ弾いてるよ」
私は思わず目を丸くしてしまう。
涙が溢れてくる。
「あの街を出た後にさ、何となく、ピアノ買ったんだよね。で、家でうだうだやってたら、近所のガキが集まってきて、『これ弾いてー』とかうるさくて」
「………」
「仕方ねぇから適当に弾いてたら、そのうちガキ共の溜まり場みたくなってさ。したら、そいつらの親とかが『ついでだから格安でうちの子に教えてあげて』とか言い出して」
「………」
「そんなことしてるうちに、その親とかのツテで老人ホームとかに呼ばれるようになって。あと、ジャズバーで頼まれて弾いたり、バンドの手伝いとかも。まぁ、今はわりと楽しくやってるよ」
式の前にお化粧が崩れるだとか、そんなことは気にしてられなかった。
嬉しくて、嬉しくて、私は「よかったね」と繰り返した。
「でも、レオと会ってるなんて知らなかった。あれから、連絡取れなくなったままだと思ってたから」
「あぁ、何か、奏の知り合いの友達の会社の人のナントカがレオと知り合いだった、みたいな? 半年くらい前かな、偶然に」
「そうなんだ」
「よく知らないけど、レオはずっと俺らのこと探してたんだって。でも、ほんと世間は狭いっつーか?」
「すごいね、それ」
「だよな。レオのやつ、『結婚するから来てね』とか言ってたけど、俺もまさか、律がいるとは思わなくて。だってあいつずっと律の話しなかったから、もう連絡取ってないのかと思ってたし」
本当に、あの子は。
私は呆れながらも、感謝せずにはいられない。
「でも、会えてよかった。色々考えてたけど、ほんとは俺もずっと、また会いたいと思ってたから」
「うん」
「あ、そうだ。あいつ、ちゃんとプラネタリウム持ってるよ。いっつも、『また律に会えた時に渡すから』って言って、後生大事にしてるしね」
キョウは煙草の煙を、抜けるような青い空に向かって吐き出しながら、