狂想曲
「こっちです」


そう言って戻ってきた迷彩パンツの後ろにいる、サングラスをかけた男――多分あれがキョウさんとやらだろうけど。


「ちゃっす」

「ばんわっす」

「お久しぶりっす」


途端に、残りの3人の男たちは、口々に言って規律正しく頭を下げた。

心なしか、その声は上擦っているように聞こえるが。


だけどもキョウさんとやらは男たちの挨拶に返事すらせず、サングラスを外しながらこちらに歩を進めてくる。



「あ……」


目が合って、私はひどく驚いた。

その、キョウさんとやらの顔が、奏ちゃんに似てたから。


けれど、驚いたような顔をしたのはキョウさんとやらも同じだった。



「なぁ、おい。お前ら、誰連れてきた?」

「はい?」

「誰連れてきたのかって聞いてんだよ!」


キョウさんとやらの怒声が響いたその瞬間、ガッという音と共に迷彩パンツの男の体が床に転がる。

どうしていきなり仲間割れを始めたのか。


ただ、キョウさんとやらは倒れた迷彩パンツの男の髪の毛を鷲掴みながら上下に揺すり、



「俺写真見せたよなぁ? お前の目は何のためについてんだ? あぁ?!」

「……ぐっ、やめっ……」

「全然顔違ぇだろ! 別人連れてきて偉そうにしてんじゃねぇぞ!」


ガッ、と再び鈍い音が響く。

男の鷲掴まれた頭部が床に叩きつけられた。


ひっ、と引き攣る男たちの顔。



「役立たずのクズ共が!」
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