狂想曲


「りっちゃん、悪いね、急に電話しちゃって」


宮内店長は本当に申し訳なさそうな顔で言った。


狭いロッカールーム。

ベビードールや下着姿の女の子たちが談笑している。



「いいですよ、どうせ暇だったし。それに、店長が電話してくるってことはよっぽどでしょ」

「いや、本当に。手当ての上乗せしとくから」


最後の一言は他の子たちに聞こえないように小声だった。



安っぽいだけの風俗店。

昔、奏ちゃんに内緒でバイトしてたところだ。


だからなのか、辞めた今でも私は、人が足りない時か、逆に女の子が出勤できなかった時の待機要員みたいになっていて、とにかく忘れた頃にこうやって電話が掛かってきたりする。



「律、久しぶりー」


わりと古株の、昔馴染みの子が声を掛けてきた。



「百花から聞いてるけど、何であたしには連絡してくれないのよー」

「いや、忙しくてさぁ」

「暇だったって今店長と話してたじゃん」

「だからぁ、今日はたまたま暇だったってだけで、私他にもコンパニオンのバイトとか色々とやってんのよ」


適当に談笑した。



百花と初めて話した日のことを思い出す。

あの日、初出勤だったために緊張でガチガチになっていた私に、一番最初に声を掛けてくれたのが百花だった。


百花とはそれから個人的に仲良くなり、ふたりで色々なことをした。


パパと知り合うきっかけになったパーティのコンパニオンに誘ってくれたのも百花だった。

ずっと何も変わらないここは、昔の記憶に溢れていた。




私は彼女たちと少し話をし、時間がきたのでロッカールームを後にした。

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