狂想曲
「触んなよ。あんた汚れるぞ」
「大丈夫だよ。私もう汚れてるから」
いや、最初からずっと、私は綺麗な存在なんかじゃなかった。
「だから、ほら、立って」
肩を貸してやると、キョウはまた「いってぇ」と言いながらも、何とか立ち上がった。
ちょっとふらふらしてるけど、大丈夫そうだ。
「まったく、どうやったらこんな怪我するんだか」
私はぼやいた。
キョウは腹部をさすりながら、
「気に入らねぇやつが多いんだよ、俺のこと。敵ばっか。まぁ、別に味方がほしいわけでもないからいいけど」
宙を仰ぐその瞳が揺れる。
「ずっとこんなこと続けてるつもり?」
「………」
「あなたがどんなことしてるかなんて知らないけど、でもこのままじゃそのうちほんとに殺されちゃうかもしれないよ」
呆れて言う私に、キョウはふっと自嘲気味に口元を歪め、
「いいんだよ、殺されても」
「え?」
「もう望みは叶ったから、あとはどうだっていい」
「………」
「って、思ってたのに、人間、欲なんて際限ないんだから困るよな」
相変わらず、何を言ってるのかさっぱりだ。
私は肩をすくめた。
「でもそれが生きるってことじゃないの?」
キョウは私の言葉に何も言わず、目を落として悲しそうな顔で笑うだけ。
私には奏ちゃんがいる。
だけどこの人には誰もいないんじゃないかと、その顔を見つめながら私は思った。
「大丈夫だよ。私もう汚れてるから」
いや、最初からずっと、私は綺麗な存在なんかじゃなかった。
「だから、ほら、立って」
肩を貸してやると、キョウはまた「いってぇ」と言いながらも、何とか立ち上がった。
ちょっとふらふらしてるけど、大丈夫そうだ。
「まったく、どうやったらこんな怪我するんだか」
私はぼやいた。
キョウは腹部をさすりながら、
「気に入らねぇやつが多いんだよ、俺のこと。敵ばっか。まぁ、別に味方がほしいわけでもないからいいけど」
宙を仰ぐその瞳が揺れる。
「ずっとこんなこと続けてるつもり?」
「………」
「あなたがどんなことしてるかなんて知らないけど、でもこのままじゃそのうちほんとに殺されちゃうかもしれないよ」
呆れて言う私に、キョウはふっと自嘲気味に口元を歪め、
「いいんだよ、殺されても」
「え?」
「もう望みは叶ったから、あとはどうだっていい」
「………」
「って、思ってたのに、人間、欲なんて際限ないんだから困るよな」
相変わらず、何を言ってるのかさっぱりだ。
私は肩をすくめた。
「でもそれが生きるってことじゃないの?」
キョウは私の言葉に何も言わず、目を落として悲しそうな顔で笑うだけ。
私には奏ちゃんがいる。
だけどこの人には誰もいないんじゃないかと、その顔を見つめながら私は思った。