狂想曲
吐き捨てたキョウさんとやらは、私を一瞥し、舌打ち混じりに再び男たちに目をやった。



「とりあえずお前ら帰れや。うぜぇ。顔見てるだけで殺したくなる」

「あ、あのっ!」

「そこで寝てるカス連れてさっさと出てけっつってんのがわかんねぇのかよ!」


びくっと肩を上げた男たちは、はっとしたように鼻血を出して倒れている迷彩パンツの男を引きずるようにして、足をもつれさせながら、逃げるようにばたばたと部屋を出て行った。


キョウさんとやらと共に取り残されてしまった私。

でも、だからって無事でいられるという保証もない。



キョウさんとやらは息を吐き、私の前にしゃがみ込んだ。



「どこも怪我してない?」


急に、先ほどとは打って変わったような声のトーン。

おまけにキョウさんとやらは、私の両手首を縛る紐をほどいてくれる。


何が何だかわからなくなった。



「人違いだ。あんたじゃない。だから関係ないのに巻き込んで悪かった」


私の体を起こそうとして伸びてくる手。


未だ意識が朦朧とする。

だから奏ちゃんが助けてくれたと錯覚しそうになる。



「大丈夫か?」

「……頭痛くて気持ち悪い、です」

「そうか。多分、クロロホルムの所為だろうけど、心配すんな。じきに治るから」

「……私、殺されるんですか?」

「殺すのはあんたじゃなくて無能なあいつらの方だ」


じゃあ、私は奏ちゃんのところに帰れるの?

と、聞けたかどうかはわからない。


一気に襲ってきた安堵感に身を委ねるように、私はまた意識を手放した。

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