狂想曲
私はあれから、気付いたらソファに突っ伏す格好で眠っていたらしい。
けれど、カーテンを開け放ったままだったため、目を覚ましたのは、強烈な朝日の眩しさの所為だった。
キョウはソファに片膝を立てて座り、煙草を吸っていた。
「あぁ、起きたのか」
私はぼうっとキョウを眺めた。
明るくなって改めて見たキョウは、それほど目立った外傷はなさそうだ。
「何だよ?」
「怪我、もっとひどいのかと思ってた。殴られたらすごい腫れるって聞くし」
「別に顔殴られたわけじゃねぇから。後ろから鉄パイプでガツーンってやられたから、背中のがやばい」
「えぇ?!」
起き抜けでまだ正常じゃなかった思考が一気に驚きでクリアになった。
それと同時にひどい目眩に襲われた。
「だ、大丈夫なの? 病院行った方がいいよ!」
「行かねぇよ。襲われて病院に行きました、とかだせぇだろ」
ださいとかださくないとかいう話じゃないと思うんだけど。
「それよりあんた、悪かったな」
「え?」
「まさかほんとに一晩中ここにいるとは思わなかったから」
「あぁ、うん。っていうか、私知らない間に寝てただけだし」
「でも、迷惑掛けたと思うから」
そしてキョウはもう一度「悪かった」と言った。
別に悪びれた顔して言われたわけじゃない。
けれど、キョウが二度も言ったから、私は頷いて見せた。
「とにかく無事ならそれでいいよ」
「うん」
「それに、あなたが眠ってたから、安心した」