狂想曲
行為が終わっても、キョウは私を腕の中で抱き締めたまま。
私は、まどろむ意識の中でぼんやりと心地のいい倦怠感に身を委ねる。
キョウは私の髪の毛を意味もなくいじっていた。
そして目が合うと、軽くキスをされた。
だから、愛されているんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。
この人の手は、決して私を傷つけたりはしないから。
乱れてべっとりと体に絡んだ邪魔な衣服はもどかしかったが、でも動くことは億劫だった。
「こういうこと、しない人なのかと思ってた」
「自分から誘ってきといて?」
「それもそうだけど、こうやってベタベタするの嫌いなんだと思ってた、ってこと」
「俺そんなこと言ったか?」
「だっていっつも『触るな』って言うじゃん」
「あぁ」
キョウは思い出したように小さく笑った。
「俺昔、虐待されてたから」
「……え?」
「だから人の手はあんま好きじゃなくて。知らないやつとかに触られると気持ち悪ぃの」
平気な顔で、キョウは言う。
だから私の方が悲しくなった。
聞かなきゃいいことなのに、なのにまた聞いてしまってる自分がいる。
「じゃあ、私は?」
「あんたは別。あんたにベタベタされるとヤリたくなるから」
「何それ」
「でもするつもりなかったんだよ。だから触られたくなかったし、我慢してたのに、あんなことしやがって」
「わけわかんない」
好きな人がいると言っていたくせに、私に欲情してて、簡単に誘いに乗って。
だけど、次の言葉を紡ぐより先にまた塞がれた唇。
「もういいだろ?」