狂想曲
外は、まだ雨が降っているらしい。
だから部屋はいつまで経っても真っ暗なままで、今が何時なのかもわからなかった。
奏ちゃんにメールを入れ忘れたことに今更気付いたけれど、でももう面倒だからどうだってよかった。
私はキョウの体の上で猫のようにだらんとする。
キョウはそんな私の頭を撫でながら、煙草を吸っていた。
「大丈夫かよ」
困ったように笑う顔。
「体、きつい?」
あれだけのことをしておいてよくもまぁ、と思ったけれど、言わなかった。
私はキョウの優しさに甘えたままでいることを選んだ。
「キスして」
「会話噛み合ってねぇじゃん」
だけど、キョウは私の言うことを聞いてくれる。
煙草とお酒の味のキス。
クラクラする。
「ねぇ、キョウ」
「んー?」
「キョウは私のこと何も聞かないよね。いっつも私が勝手に喋ってるだけで」
「聞いてほしいなら聞くけど」
「どうかな。わかんないや」
何も、わからない。
キョウはまた私の頭を撫でた。
「俺も俺のこと時々わかんなくなる」
キョウの手は、ひどく心地よくて。
私は疲労と睡魔に負けて、そのまま目を瞑った。
キョウはそんな私のおでこにくちづけを添えてくれた。