狂想曲
「まぁ、小遣い稼ぎとしては、割がいいから我慢してるけど。あたし今欲しいものあってさぁ」


あんたまさか今度のカレシにも貢いでんの?

と、聞こうと思ったけど、やめといた。


百花はそうやってることで満足してるらしいし、第一、自分で稼いだ金をどう使おうと他人がとやかく言うことじゃないから。



「でもさ、確かに割はいいけど、私さっきのオヤジに『いくらくらいで男にヤラせているんだい?』って聞かれたから。さすがに気持ち悪かったもんね」

「うわー、それないわぁ」

「しかも私のお尻触りすぎだから。私がマッチだったらとっくに火がついてるよ」


私の言葉にケラケラと百花は笑う。


百花は風俗嬢だけど、でも決して客と一線は越えない。

だから、そういう意味では私なんかよりずっとちゃんとしてると思う。



「ねぇ、それより終わったら飲みに行こうよ。人が飲んでるの見てたら喉渇くんだよね」


いつもの調子の百花の誘いに、頷く私。



「私もちょうど飲みたいと思ってたの」

「律は毎日じゃない? しかも最近はヤケ酒って感じ」

「そう?」

「そうだよ。無理やり飲んでるって感じに見える」


確かに家にいたくないというのはあったが、そんなつもりはなかった。

だから少し驚いた。



「まさか、恋愛で悩んでます、とか?」

「そんなわけないでしょ」


そんなわけがない。

私は言い聞かせるように心の中で繰り返す。



「ほら、きみら、サボらないの」


チーフがそんな私たちを睨んでくる。

私と百花は嫌な顔を見合わせた。


会場にいるオヤジたちの禿げ上がった頭が、シャンデリアの下でテカテカと光っていた。

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